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〈新時代宝箱〉№0014 「ユニバーサル社会とはどんな社会だろうか」令和元年2019年12月21日(土)

会長 伊藤 和男   


当協会は、ユニバーサル社会の実現を基本理念に立ち上がった。しかし、ユニバーサル社会についての認識は、会員全体に必ずしもきちんと共有されているとは言えない。
最もそれは、社会の全ての人々にも言えることで、昨年成立した「ユニバーサル社会推進法」においても、あまり明確にされていないのが現状である。

「ユニバーサル社会」のもととなった用語は、「ユニバーサルデザイン」である。
「ユニバーサルデザイン」は、1985年にアメリカのノースカロライナ州立大学のメイス教授によって提唱された考え方で、
フリー百科事典『ウィキペディア』によれば「ユニバーサルデザイン(Universal Design/UD)とは、
文化・言語・国籍や年齢・性別などの違い、障害の有無や能力差などを問わずに利用できることを目指した建築(設備)・製品・情報などの設計(デザイン)のこと」だという。

そして、その設計(デザイン)の具備する要件について、同じ『ウィキペディア』で7原則が上げられている。
1.どんな人でも公平に使えること(公平な利用)
2.使う上での柔軟性があること(利用における柔軟性)
3.使い方が簡単で自明であること(単純で直感的な利用)
4.必要な情報がすぐに分かること(認知できる情報)
5.うっかりミスを許容できること(偶発的または意図しない失敗に対する寛大さ)
6.身体への過度な負担を必要としないこと(少ない身体的な努力)
7.利用のための十分な大きさと空間が確保されていること(接近や利用のためのサイズと空間)等がそれである。

ところで、同じような意味を持つ用語に「バリアフリー」がある。
わが国では、この用語は用いられることが多く、一般の人々にもなじんでいる。
「バリアフリー」は、主として障害者が生活する上で、社会に存在する障壁(バリア)を取り除いていくことを意味し、バリアをなくすことで障害者も健常者と同様に生活しやすくしていくことである。
以上のように、バリアフリーが、既にでき上っている設備や製品を障害者を含む誰もが使いやすくするために改編していくのに対して、ユニバーサルデザインは、設備や製品を作る前から様々な人々が使うことを想定して設計し作り上げていくことを意図している。
つまり、ユニバーサルデザインは、せっかく完成している設備や製品を改めて作り直すという二重の手間をかける必要がなく、そうした点では、経済的にも余分の負担を要しない効率的な方策といえる。

さて、そこで「ユニバーサル社会」についてはどのように理解したらよいのだろうか。
私は、まず「ユニバーサル社会」を成り立たせる上でその基礎にユニバーサルデザインの考え方を根付かせることが最も重要だと思っている。
そのことによって社会の構成員である住民は、自ずと周囲の様々な境遇にある人々に目を向け、設備や製品、情報のみならず、生活全般にわたって誰もが暮らしやすい社会の構築に意を注ぐことになる。

このようにユニバーサルデザインが社会の根本的思想として定着していけば、市民生活の中で人々は、常に立場の異なる人のことを考えるようになり、社会生活全体に思いやりの機運が高まる。
そして、こうした社会では利己主義的な考え方より他人との相互関係に基づき最も最適な問題解決を行うようになる。

私は、このように様々な立場や境遇にある人々のことを考え、種々の事柄を決定していく社会が「ユニバーサル社会」であると思う。
しかし、このような社会は一朝一夕で実現するものではない。

そこで必要なのは、様々な立場や境遇の人々が集まって交流し互いに相手を知り、そこから皆に共通する事項を組み上げて誰もが暮らしやすい社会を作り上げていく努力がなされることが重要で、そのような社会が「ユニバーサル社会」の本質であろうと思う。
今回立ち上げた千葉県アイパートナー協会が、そうしたユニバーサル社会を作る先頭に立てればと念願する次第である。

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