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〈新時代宝箱〉№0009 「孤立化する人々と千葉県アイパートナー協会の使命」 令和元年2019年9月30日(月)

会長 伊藤 和男   


私は、千葉県視覚障害者福祉協会の会長として視覚障害者総合支援センターちばの経営に携わっていた際に、職員向けにメッセージを毎月出していた。
その中から平成29年9月22日に出した『孤立死』という文書を加筆し掲載することにした。
これは、当協会が今後取り組んで行こうとしている事業と深く関係して来ると思われるからでもある。

孤立死
過日ニュース番組のレポートの中で「孤立死」という言葉を聞いた。
そのレポートでも言われていたが、一般的には「孤独死」という用語の方がよく用いられているという。
私自身も、これまで「孤立死」は、あまり聞き慣れていない言葉だと思った。しかし、行政的にはそのように使用されていることが普通だそうだ。

孤独死(孤立死)は、1970年代頃から顕在化してきた核家族化の中で、特に都会に住む高齢者が地域のコミュニティに溶け込めず、
社会的経済的に孤立し孤独に陥って、人知れず誰にも看取られないで亡くなる状況を表した用語として用いられるようになった。

もともとわが国の社会は、2世代3世代の家族が一緒に暮らす大家族が普通であった。孤立化の状況は、戦後産業構造が変化する中で、多くの若い人たちが働き場所を求めて都市に集まり、人口動態が大きく変わることによってもたらされた。
こうした大家族の崩壊は、それまで家族の中で互いに助け合って暮らしてきた親子や兄弟姉妹をばらばらにしてしまうと同時に、個人主義の台頭も手伝って単一家族の過程を常態化するに至った。

このような社会では、当然ながら子どもの教育が終わってその子が独立してしまうと、家庭内には夫婦のみが残ることになる。
こうして残された夫婦も、人生の晩年にはひとりになってしまいやすく孤独な日々を送る場合が多い。
わが国では、こうした状況に陥った人たちに対しても、従来は村社会の緊密な人間関係によって見守るという習慣があったが、現代は、都会の希薄なコミュニティ社会のあり様を反映して、亡くなっていたことを後で発見するというケースが見られるようになっている。

孤独死(孤立死)は、昨今の単身者の増加によって高齢者のみならず、不安定な雇用状況を反映して多くの成人者に拡大し、ますます注目を集めるようになっており、福祉問題の対象としても見逃せない課題である。
福祉行政としても、このような社会状況にかんがみ、公的な施策を通じて対象者の見守りを強化してきているが、進行する高齢化と複雑化する経済社会の中で孤立化していく人々の増加には追いつかない状況である。

孤立化は、障害者にとっても見逃せない問題である。 一般に障害者は外出が困難であり、家に閉じ籠りがちになりやすい。そこで、何らかの理由でひとり暮らしに陥ってしまった障害者は、まさに孤立状態におかれる事態になる。
私は、このような事態を回避するための必要な支援は、当協会のようなユニバーサル社会を目指す組織の使命ではないかと考えている。

現在、視覚障害者の7割以上が65歳を超える高齢者である。
しかもその多くが中途で失明した方々だとすれば、日常生活に大きな困難を抱えていることは否めない事実である。
他の障害者を見ても同様の状況が見られるし、健常者においても既に高齢化率が3割に近づいている。

千葉県アイパートナー協会が、たんに障害者のみの組織を目指さず、高齢者を含むあらゆる年齢層の人々に呼びかけて組織しようとしたのは、このような社会の問題点についても、皆の英知を結集して改善する方途を見出して行こうとの思いがあったからに他ならない。
ぜひ、こうした問題に興味を持っている方々の当協会への加入をお願いしたいと考える。

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