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〈新時代宝箱〉№0016 「新型コロナウイルス感染と障害者」令和2年2020年4月17日(金)

会長 伊藤 和男   


日本列島で最も美しい季節の春が訪れている。
しかし、今年は、本来誰もが浮き立つような喜びを感じているはずのこの季節が、むしろ暗雲に包まれ全ての国民が不安におののいている。
言うまでもなく中国に始まった新型コロナウイルスによる感染は、今やわが国のみならず世界全体に広がり、人類の危機とも言える状況を強めてきていることが原因だ。

わが国では、今年1月に中国人観光客を乗せたバスの運転手やバスガイド等に初めて感染が見られ、さらに、感染者が出現した豪華客船を人道的な見地から横浜港に入港させたことによって国内へと広がる契機となった。
4月も半ばを迎えた今、感染爆発の前夜とも言われており、医療崩壊の危機が取り出されてもいる。

そんな中で千葉県内では、恐れていた障害者施設でのクラスターと呼ばれる集団感染が3月末に起きてしまった。
障害者福祉施設「北総育成園」(東庄町)では、利用者や職員等95名の新型コロナウイルスの感染が発生した。
この中には、関係の茨城県神栖町の施設の利用者も一部含まれている。

北総育成円は、船橋氏が管理を委託する社会福祉法人「さざんか会」(同市)が運営する知的障害者入所施設で、年齢的には平均60歳程の利用者が70名ほどいる。
利用者の多くは重度の知的障害者で、日中は、野菜や花の栽培、木工作り等の作業をしているという。

現在、感染した障害者の多くは、施設内で行動エリアを分けるなどして感染をくい止める対策が取られているとのことだが、支援に当たる人たちの心身の過酷さが思いやられる。
平時でも障害者の支援は難しいが、感染という特殊な状況下では、通常の支援に加えて感染症という疾患の特質をふまえて支援しなければならない。

一般に障害者の支援は、支援者が障害者と接して支援することが少なくないため、新型コロナウイルス感染防止の観点から言われている人と人との間隔を2㍍以上に保つことが困難で、そのことだけでも今回の感染者支援の難しさが察せられる。

私は視覚障害者である。視覚障害者は、その障害の特質から視力の度合いによっては、触覚を駆使することによって生活している。
そのことは、どうしても物や人に触れる機会を多くする。すなわち、視覚障害者は、ウイルスを身体に呼び込む危険性をはらんでいる。
その意味でも、感染のリスクは健常者より高く、治療には困難を極めるはずだ。

簡単に収束しないであろう今回の新型コロナウイルス感染の事態が、早く終わることを心から願うとともに、同時に障害者の感染が、これ以上発生しない対策を官民一体となって進めてもらいたい。

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