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ホーム転落事故に思う…会長 伊藤 和男

 またホーム転落事故で視覚障害者の尊い命が失われた!
 昨日(令和元年10月1日)、葛飾区の京成線立石駅でホーム転落死亡事故が発生してしまった。事故に会ったのは視覚障害の(身障手帳2級)秋谷喜代子さん(66)で、ホーム上にいた人によれば、秋谷さんは、階段を降りた直後に躓いて転び、ホームから転落したという。
 その後、秋谷さんは単独でホームに上ろうとしていたところ、進入してきた電車とホームの間に挟まれて死亡したと思われる。秋谷さんが転落したのを見たホーム上の人は、直ちに非常停止ボタンを押してくれたものの、既に進入してきた電車を停止させるには及ばず、結果的に秋谷さんを助けることはできなかった。
 今、各鉄道会社では、国土交通省の指導もあって1日あたり乗降客10万人以上が利用する駅において、ホーム策を設置する方向で計画を進めているが、これによってこうした事故が無くなるかは疑問である。もちろん、ホーム策を設置した駅の増えることは、私たち駅を利用する視覚障害者の安全を今より高めることは間違いないし、その意味で大きな進歩といえる。しかし、乗降客10万人以上の駅がどれだけあるのか?
 私は、一昨年から2年にわたって日本盲人会連合の代表として国土交通省の主催する「バリアフリー法及び関連施策のあり方についての検討会」に委員として出席してきた。その中で常に気になっていたのは、むしろ地方の乗降客の少ない駅での安全対策である。最近、こうした駅では駅員の無人化が急速に進み、視覚障害者をはじめ車椅子使用の肢体不自由者の利用に不便をきたすばかりか、安心安全な鉄道利用が困難になりつつある。
 今回の事故を受けて関係団体では、恐らく『声明』の発出が行われるとともに、鉄道会社や国土交通省などに対して、早急に安全対策実施の申し入れを行うと思われるが、その都度行わなければならないこうした活動に担当者たちは、苦い思いを禁じ得ないであろう。私も、出席した関係会議の席で、いつもオウムのように同様に駅での安全対策の充実を発言してきたが、なぜかむなしい思いのみが残った。
 ところで、こうした事故について、鉄道会社や国土交通省の担当者の思いはどうであろうか。私は、関係の諸会議に出ていた者としての印象から振り返ってみると、彼らの思いも複雑であろうと推察する。私たちの願いを実現したいと思う一方で、会社関係者は、自社での自分の立場や判断できない経営状況を思い、もしかしたら席上でいたたまれない気持ちに陥っていたのであろう。
 私は、このように毎年のように起きる同種の事故を防ぐために、根本的な研究の見直しが必要ではないかと思う。近年は安価で設置しやすいホーム策の開発に重きが置かれているが、これでは、前述したように10万人以下の乗降客の利用する駅では、今後とも安全対策の見通しがつかず、ホーム転落事故の不安は拭われることがない。そこで、私は、AIを利用した盲導ロボットの研究を加速してもらって、少なくとも全ての駅ホームに常備して視覚障害者の安全な鉄道利用を実現して行くことを提案したい。既に宇宙の彼方に作られている宇宙ステーションにまでたどり着く宇宙船を開発している人類であることを考えると、そう難しいことではないのではなかろうか。ぜひ、専門家の支援をお願いしたいものである。



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